2009年02月13日

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(メチシリンたいせいおうしょくブドウきゅうきん、Methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)とは、抗生物質「メチシリン」に対する薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌の意味であるが、実際は多くの抗生物質に耐性を示す多剤耐性菌である。なお、生物種としてはあくまで黄色ブドウ球菌である。

●特徴

MRSAは黄色ブドウ球菌が耐性化した病原菌であり、黄色ブドウ球菌と同様に常在菌のひとつと考えられ、健康な人の鼻腔、咽頭、皮膚などから検出されることがある。

そもそも薬剤耐性菌であるため薬剤の使用が多い病院で見られることが多く(耐性菌は抗生物質の乱用により出現すると言われている)、入院中の患者に発症する院内感染の起炎菌としてとらえられている。しかし病原性は黄色ブドウ球菌と同等で、健康な人にも皮膚・軟部組織感染症などを起こしうる。病院外での発症が最初に確認されたのは1960年代にさかのぼるが、近年では健康な人のごく一般的な感染症の起炎菌として見つかることもあり、本菌が病院から街中へと広がっていることが示唆されている。

病院内で感染すると、免疫力が低下した患者では通常は本菌が起こすことはないような日和見感染を起こすこともある。一旦発症するとほとんどの抗生物質が効かないため治療は困難である。特に、術後の創部感染、骨感染(骨髄炎)、感染性心内膜炎(IE)、臓器膿瘍は難治性化し、適切な治療を受けられないと後遺症ばかりか死の転帰をたどる事になる。

院内で感染者が判明した場合、感染者の治療も重要であるが、感染を広げないことも重要であり、標準予防策に基づく適切な感染管理が必要となる。MRSAの場合、接触感染予防策が適用である。

代表的な治療薬はバンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシンである。2006年4月、リネゾリドが新薬として承認された。菌種(クローン)によっては、ミノサイクリンやレボフロキサシン、クリンダマイシン、ST合剤(スルファメトキサゾールおよびトリメトプリムの合剤)などが、有効か中等度有効であることがある。「抗菌薬使用のガイドライン」ではバンコマイシン、アルベカシンを第一選択薬とし、効果が得られなかった場合などにテイコプラニン、リネゾリドを使用するよう推奨されている。また、国内では適応がとれていないが、欧米ではキヌプリスチン・ダルホプリスチン(シナシッド®)も有効であることが証明され、使用が認可されている。

バンコマイシンは耐性菌の出現が少ない抗菌薬としてMRSAの治療に汎用されていた。しかし2005年現在、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)やバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)の出現が報告されていることから、その使用には十分な注意が必要とされている。さらに、β-ラクタム薬との併用によってバンコマイシン耐性が発現するMRSAも出現している。これはbeta-lactam antibiotic induced vancomycin-resistant MRSA (BIVR) と呼ばれており、併用には注意が必要である。

要約すると次のとおりとなる。

  • 多剤耐性の黄色ブドウ球菌である。
  • 病院内で見つかることが多いが、最近は街中でも感染を起こしている。
  • ほとんどの抗生物質が効かないため、感染症は難治性である。
  • 病院内で感染が判明した場合、感染の伝播を防ぐことが重要である。
  • バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシン、リネゾリドが抗MRSA薬として認可されている。

80%エタノールが消毒薬として有効である(エタノール消毒は芽胞を持たない細菌に有効)。

●耐性機構

ペニシリン系抗生物質をはじめとするβ-ラクタム系抗生物質は、細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンの合成を阻害することで作用する。これに対して、従来のペニシリン耐性ブドウ球菌はペニシリン分解酵素を産生することで薬剤耐性を獲得した。そこでこれらの細菌に対しても有効な、ペニシリン分解酵素によって分解されない薬剤が開発された。これがメチシリンであり、ペニシリン耐性菌の治療に効力を発揮した。

しかしながらMRSAは、従来のペニシリン耐性菌とは別の戦略を採ることでメチシリン耐性の獲得に成功した。MRSAは従来のブドウ球菌とは異なり、β-ラクタム剤が結合できないペプチドグリカン合成酵素(PBP2')を作ることでβ-ラクタム剤の作用を回避する。このPBP2'というタンパク質はmecAという遺伝子にコードされているが、この遺伝子はDNAカセット染色体と呼ばれる部分に、他の薬剤耐性遺伝子とともに集まっており、ある菌から他の菌へ種を超えて伝達されることが解明された。

一般に薬剤耐性を獲得した細菌は、薬剤感受性の細菌に比べて増殖が遅い傾向があり、MRSAもペニシリン感受性の黄色ブドウ球菌に比べると増殖が遅い。このことは、抗生物質の常用に伴い術後離開創および術後感染創においてMRSAが検出される事実と関連があるのではないかと指摘する声がある。

●関連項目





posted by kamiryu07 at 21:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 病名マ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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