2010年03月28日

本態性血小板血症(血小板増加症)

本態性血小板血症(ほんたいせいけっしょうばんけっしょう、英:Essential thrombocythemia または Essential thrombocytosis)とは、骨髄増殖性疾患の一つで造血幹細胞レベルの異常から主に血小板が著しく増加する血液疾患である。(ICD-10 D75.2, D47.3)

原発性血小板血症」や「特発性血小板増加症」、「血小板増加症」「血小板増多症」あるいは単に「血小板血症」と呼ばれることもある。

●概要

骨髄で血小板を産出する巨核球が著明に増加し、末梢血中の血小板数が増加する。末梢血中の血小板数はほとんどの患者で60万個/μlを超え、100万個/μlを超えることもめずらしくはない。時に200万個 /μlを超えることもある(基準値は15万から40万個/μl程度である)。時に白血球や赤血球も増加していることがあるが、増加していても血小板の増加ほどには著明ではない。

血液所見以外では脾腫(脾臓が腫れ大きくなること)が認められることが多い。

※末梢血とは血管の中を流れている通常の血液のことである。骨髄中にプールされている血液や臍帯血などと区別するために末梢血と呼ぶ。通常行われる腕から採血する血液検査は末梢血の検査である。

●症状

末梢血中の血小板が増加することにより痛み・痺れ等の血栓症の症状、あるいは逆に血小板の機能の異常や凝固因子の欠乏により紫斑や鼻血などの易出血症状が出ることもある。他には倦怠感・めまい耳鳴・視覚異常などが見られることがある。

頭痛を訴える患者は比較的多い。先端紅痛症もみられることがある。

しかし著しい血小板の増加にも関わらず無症状のことも多く、健康診断や他の疾患の検査等で見つかることが多い。

特徴的な症状ではないが、脾腫による左わき腹の違和感・痛みを訴える患者もいる。

●検査

末梢血の血液検査に加えて、診断には骨髄検査が必須である。 骨髄における巨核球の著明な増加が本症の本体だからである。また、慢性骨髄性白血病との鑑別のために遺伝子検査(末梢血もしくは骨髄)も行われることが多い。脾腫を確認するために超音波検査もしくはCT検査が行われることもある。

診断確定後も定期的な血液検査は欠かせない。

●病理組織学的所見

末梢血では血小板数の増加に加え、大きさ、形状に異常がある血小板がみられることがある。巨大血小板もみられることがある。通常、末梢血に芽球(blast)が現れることはない。

骨髄では過形成状態であることが多いが各成熟段階の細胞は保たれており、明かな芽球(blast)の増加はみられない。骨髄において巨核球の数が著しく増加するのに加え、大型や異型の巨核球が見られることが多い。

●発症率

研究機関によって異なるが人口10万人当たり1.5から2.5人程度とされる。

若年層には少なく60歳代に向けて発症率は増加するが、30歳代の女性にも発症率のピークがある。50歳以上での発症には性差はほとんどないが、50歳未満の発症は女性の方が多い。

●診断基準(2008年WHOによる)

(1)血小板数が45万/μl以上

(2)大きく成熟した巨核芽球の増生がある一方、骨髄球系、赤芽球系の増生はほとんど認めない

(3)除外基準

1. 真性多血症の所見がない

 循環赤血球量正常。あるいはHb<18.5g/dl(男性)、Hb<16.5g/dl(女性)。骨髄鉄染色標本で鉄を認める。あるいは血清フェリチン正常またはMCV正常。

2. 慢性骨髄性白血病の所見がない

 フィラデルフィア染色体陰性。BCR-ABL融合遺伝子陰性。

3. 骨髄線維症の所見がない

 骨髄生検で骨髄線維化を認めない。

4. 骨髄異形成症候群の所見がない

 染色体異常を認めない(5q−、t(3;3)、inv(3))。

(4)JAL2V617Fか他のクローナル異常が示されているもしくは2次性血小板血症の根拠を認めない。

●鑑別

本態性血小板血症と同様に血小板が増加する疾患と鑑別を述べる。

同じ骨髄増殖性疾患に分類される病気で、顆粒球系白血球の増加が著明である。遺伝子の転座によりbcr/abl融合遺伝子が形成されることによって発症する。本態性血小板血症とはbcr/abl融合遺伝子の有無、NAPスコアで鑑別される。
同じ骨髄増殖性疾患に分類される病気で、赤血球が著明に増加する。ほとんどの患者でV617F変異JAK2遺伝子が見つかっている。本態性血小板血症患者でもほぼ半数にV617F変異JAK2遺伝子が見つかり関連の深い疾患である。 本態性血小板血症とは主に増加している血球で鑑別されるが、本態性血小板血症と真性多血症のどちらであるか鑑別が困難な症例も存在する。
  • 二次性血小板増加症
出血、脾臓摘出、感染症、一部の免疫性疾患、一部のなどで二次的に血小板が増加することがあるが本態性血小板血症ほどの著しい増加はせず、原因が特定され、また原因の疾患が治癒されれば正常値に戻る点で異なる。

●原因

造血幹細胞レベルでの遺伝子の後天的な変異と考えられているが、決定的な原因は特定されていない。

●治療

主に血栓症のリスクで治療手段は異なる。

  • 低リスク群(40歳以下、かつ血栓症・出血症状の兆候がない、かつ喫煙や成人病を経験していない)
投薬は行わず、経過観察を行うことが多い。
  • 中リスク群(低リスク群および高リスク群に該当しない群)
患者ごとに考慮されるが、低用量アスピリン(アセチルサリチル酸)などの抗血小板剤を投与することが多い。
  • 高リスク群(1.60歳以上、2.血栓症・出血症状の既往がある、3.特に血小板数が多い(150万/μl以上)、4.特に血栓症を心配する要因がある、のどれかに該当する。)
血小板数を減らすため、代謝拮抗剤ヒドロキシカルバミド(ヒドロキシウレア、商品名ハイドレア)を投与する。 抗血小板剤が併用されることも多い。
  • 注1. アメリカなどでは塩酸アナグレリドが使われることが多いが日本では未承認である。
  • 注2. アスピリン(アセチルサリチル酸)は低用量(81〜100mg/day程度)で使用した場合のみ抗血小板作用が現れる。解熱・鎮痛等抗炎症薬として使われるほどの量(500mg/day〜)では抗血小板作用は現れず逆効果になることもある(アスピリン・ジレンマ)。
  • 注3. 特に血小板の特に多い患者では易出血傾向も出ることが多く、血栓症と易出血症状のそれぞれに注意が必要である。

●予後

主に血栓症リスクによる。治療によって血栓症リスクが適切にコントロールされていれば予後は概ね良好であり、10年生存率はおおよそ70%である。多くの場合健康な人と同様な経過を送る。

高リスク群の未治療では重篤な血栓症を起こす可能性は高い。

ただし、確率的には低いが急性白血病や骨髄線維症に移行する場合があり、その場合には良好とは言えないことが多い。

●妊娠について

本態性血小板血症患者の妊娠例は数が少ないが、ほとんどの例で妊娠中には血小板数が顕著に低下し、正常値になった例も報告されている。ただし出産後には速やかに血小板数は増加する。しかし、妊娠中にも血小板数が減少しなかった例もある。

多くの本態性血小板血症患者の妊娠例で無事に出産しているが、本態性血小板血症患者の流産の可能性は正常女性より高い。流産率は3倍程度との報告もある。

インターフェロンの投与を考慮されることもあるが、一様ではない。妊娠を希望する場合にはヒドロキシカルバミド (商品名ハイドレア)は禁忌である。

●関連項目


posted by kamiryu07 at 17:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 病名ハ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/145139783

この記事へのトラックバック