2016年02月06日

花粉症(2)

花粉症(1)を見る

●診断・検査

花粉症の検査は、

  1. その症状がアレルギー反応であることを証明すること
  2. アレルギーの原因となっているアレルゲンを特定すること(花粉で反応しているかどうか、感作されている花粉の種類の特定)

の2点が重要であり、そのための検査が行われる。

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アレルギーの証明

  • 前述のように、感冒など、花粉症の症状に似た疾患があるため、症状をしっかり把握し、問診によってアレルギーの既往症や家族歴があるかどうか(アトピー素因があるかどうか)を調べることが必要である。また、鼻内の粘膜の様子を検査する。典型的な症状があって、実際に花粉飛散時期に一致しているのであれば、概ねこれだけで鑑別がつくことが多い。
  • 一般的に追加して行われる検査は、鼻汁好酸球検査であり、これによってアレルギー症状であることがほぼ証明される。アレルギー症状特有の好酸球という白血球が鼻汁中に増加していることを、患者の鼻汁を採取し、染色法によって確認する。これは、診療時に簡単に行うことができる。
  • 血液中の総IgEの定量(RIST)も参考になる。血液検査で分かる。ただし、重症度の目安にもなるが、必ずしも実際の症状とは相関しないので注意が必要。
  • 副鼻腔炎などが疑われる場合はエックス線検査など、他の検査も一緒に行われることがある。

アレルゲンの特定

  • アレルゲンを特定するためには、血液中の特異的IgE(RAST)を測定する方法がよく行われる。この血液検査は、採取した血液を検査機関に送付して行うため、結果が出るまで数日かかるが、検査用アレルゲンを用意しておく必要がないので簡便である。ただし費用はかかる。
  • その他、微量のアレルゲンを皮内注射して反応を調べる皮内テスト、針で小さく傷をつけたところにアレルゲンをたらして反応を調べるスクラッチ(プリック)テストなどの皮膚テストや、アレルゲンを染み込ませた紙のディスクを鼻粘膜にのせて症状を誘発させる鼻誘発テストなどがある。これらの実際に反応を調べる方法は、テスト前に患者が薬剤を使用していると正しい反応が得られない。薬剤の使用を数日以上中止して症状を我慢させなくてはならないため、シーズン以外での検査に適するといえる(薬剤を用いていない初診患者であれば適用となる)。

ただし、検査によってアレルゲンを特定しても、治療法には変わりがないため、その意義を疑問に考える医師もいる。しかし、患者自身が自分のアレルゲンを知って効率的に対処できたり、疾病に対する認識(自覚)が深まるようであれば、有用であるといえよう。

重症度の把握

実際の重症度を調べるには、患者にアレルギー日記(花粉症日記)をつけてもらうのが一番の方法である。この利点としては、自分の重症度や日による症状の変化などを把握できるため、アレルゲンが特定できていない場合、アレルゲンを推定するのに有用となることがある。

しかし、重症度とQOLの障害は別物であり、近年はこのQOLを重視する方針での治療が推進されるようになっているため、治療の経過を判断する材料にはなるが、それでけで判断することはない。

●治療

受診が推奨される診療科

一般的には、花粉症の治療を受ける場合に適した診療科は耳鼻咽喉科であるが、近年のアレルギー増加にともない、たいていの医師は一定レベルの知識を有している。よって内科などでも充分な治療が受けられることがある。小児の場合は、慣れているという点で小児科のほうがよいことがある。同様に妊婦および授乳婦の場合は、産婦人科のほうがなにかと融通がきくことがある。

ただし、症状がひどい場合は、その部位の専門医にかかったほうがいいとはいえる。すなわち鼻や喉の症状であれば耳鼻咽喉科、目の症状であれば眼科、皮膚症状がひどい場合は皮膚科が適する。これらの診療科の標榜とともに、アレルギー科の標榜がなされていると、なおよいといえる(一般にアレルギー科単独で標榜していることは少ない)。ただし、アレルギー科を標榜している医療機関に必ずアレルギー専門医がいるとは限らない。アレルギー専門医を調べるには、日本アレルギー学会や日本アレルギー協会に問い合わせるとよい。

なお、自治体の保健所などが相談体制を整えつつあるので、まずはそこで相談するのもよい。

治療

治療は目的や方法によっていくつかに分けることができる。

対症療法と根治療法
一般に花粉症の各症状を抑えることが目的のものは対症療法と呼び、花粉症そのものの治癒を目指すものは根治療法と呼ぶ。医療機関における各種の薬剤治療(薬物療法)は対症療法であり、現在のところ確実な根治療法は開発されていない。唯一、減感作療法が根治療法にもっとも近いものといえる。
投与期における分類
症状が出る前から予防的に薬を服用するなどのことを初期治療(療法)または予防季節前投与と呼び、症状が出てからも比較的コントロールできている状態に維持すること保存的治療または維持療法などと呼ぶことがある。いったん症状がひどくなってしまった場合、その症状を押さえ込む治療を導入療法と呼ぶこともある。医療者側からみた分類といえる。初期治療を受け、花粉が飛散する前から薬の内服などをすると症状が出にくく、出ても軽くすむことは実証されている。スギ花粉症のシーズン前には、飛散開始時期の予測が出されるので、それを目安に2週間程度前に受診し、適切な薬の処方を受けて使用をはじめるとよい。症状がひどくなると炎症を抑えるのが難しくなる傾向があるので、予防ができなかった場合でも、できるだけ軽いうちに受診したほうがよい。
メディカルケアとセルフケア
薬の処方を受けるなど医療機関における治療(メディカルケア)とは別に、患者自身が生活上さまざまなことに気をつけると発症を遅らせることができたり、軽く抑えることができる。こうした患者自身ができる対策をセルフケアと呼ぶ。多くはアレルゲンの回避と除去が目的であり、考え方によってはもっとも重要な治療といえる。薬局・薬店において市販薬(大衆薬)を購入して使用するのはセルフメディケーションというメディカルケアであり、かつセルフケアでもあるといえよう。

薬物治療(対症療法)

抗アレルギー薬

定義

薬剤の分類や呼び方は少々の混乱が生じている。専門家における呼称と一般に広く用いられる呼称も異なったまま慣用されている。

花粉症はアレルギーであるため、その治療に用いられるものは抗アレルギー薬といえる。それらは薬理作用により以下のように大別できる(広義ではステロイド薬をも含めて抗アレルギー薬と考えることもある)。

(1)肥満細胞からのケミカルメディエーター(化学伝達物質)の遊離を抑えるもの(ケミカルメディエーター遊離抑制薬。肥満細胞安定薬とも)

(2)遊離された後のケミカルメディエーターの作用を阻害するもの(抗ケミカルメディエーター薬:抗ヒスタミン薬、抗プロスタグランジン・抗トロンボキサン薬、抗ロイコトリエン薬など。受容体拮抗薬とも)

専門的には、(1)の遊離抑制作用のみを抗アレルギー作用と呼ぶ。よって、(1)の遊離抑制作用のある薬のことを抗アレルギー薬と呼ぶ。これは、初のケミカルメディエーター遊離抑制薬であるクロモグリグ酸ナトリウムのことを、ヨーロッパの一部において抗アレルギー薬(anti-allergic drug)と呼んだことに由来している。

しかしながら、遊離抑制作用を持つものを抗アレルギー薬と呼ぶと定義すると問題が生じることがある。抗ヒスタミン薬の中には、抗ヒスタミン作用の効果だけでなく、ケミカルメディエーター遊離抑制薬およびケミカルメディエーター遊離抑制作用を持つもの(これを第二世代抗ヒスタミン薬と言う。)があり、第二世代抗ヒスタミン薬も抗アレルギー薬に含まれるという分類になる。患者向けとして広く一般に用いられている呼称はこれが多く、第二世代抗ヒスタミン薬は抗アレルギー薬として普及してしまっている。一方、ケミカルメディエーター遊離抑制作用のない第一世代抗ヒスタミン薬は、単に抗ヒスタミン薬と呼ばれることが多い。

こうした薬剤の分類や呼び分けは、医師・研究者や治療する疾病の分野によってやや異なることがある。一般向けに出版されている書籍での説明や、インターネット上の花粉症・アレルギーの説明を行う各種サイトによっても、微妙に異なる場合がある。たとえば、第二世代抗ヒスタミン薬をさらに細分化し、第三世代とのカテゴリーを設ける医師・研究者もいる。

過去にケミカルメディエーター遊離抑制薬(抗アレルギー薬)のことを体質改善薬ということがあったが、抗ヒスタミン薬とは作用機序が異なる事実においてそのように呼ばれただけであり、いわゆるアレルギー体質は改善されない。アレルギーの発症を予防する効果もない。便宜的に患者に対してそう説明されることがあるというが注意が必要である。

薬物の特徴

  • 古い第一世代抗ヒスタミン薬は抗コリン作用が現れやすく、実用上では口が渇いたり眠気などの副作用が強い。一方、新しいタイプの第二世代抗ヒスタミン薬は、そうした副作用などが現れにくい。
  • 上述のように第二世代抗ヒスタミン薬は、ケミカルメディエーター遊離抑制作用(抗アレルギー作用)がある。

第一、第二を含めて「症状を抑える」という対症的な治療効果であり、根治薬ではない。

薬物作用

抗ヒスタミン作用(効果)
肥満細胞から遊離したヒスタミンが、神経や組織にある受容体に結合するよりも前に、その受容体に結合してしまう作用である。すなわち、鍵穴に鍵が差し込まれる前に、鍵穴をふさいでしまう作用といってよい(ただし、近年は受容体の活性を落とす作用がその主要な効果であると考えられている)。一般にきわめて即効性がある。
ケミカルメディエーター遊離抑制作用
ヒスタミンなどのケミカルメディエーターが肥満細胞から出てこないようにする作用である。こちらは、一般に数日以上たたないと充分な効果が出てこない。そのため、この作用を期待するには、予防的に発症前から薬を用いるとよい(これは発症後に用いても無駄ということではない)。

治療の実際

抗ヒスタミン薬(第一世代抗ヒスタミン薬)の投与

飲んで数十分で強い効果が出てくる第一世代抗ヒスタミン薬は、病院で処方されることもあるが、薬局・薬店で購入できる総合鼻炎薬の主剤となっている。こうした鼻炎薬には、効果を増強するため交感神経興奮剤(塩酸プソイドエフェドリン、塩酸フェニレフリン等)や抗コリン剤(ベラドンナ総アルカロイド、ダツラエキス等)といった薬がブレンドされているが、皮膚のかゆみなどの飲み薬には、ほとんど第一世代抗ヒスタミン薬だけというものもある。鼻炎薬では効果が強すぎる場合(口の渇きなどの副作用が強い場合)、かゆみの薬を試してみるのもひとつの方法である。

一般に下記の第二世代抗ヒスタミン薬よりも眠気などの副作用が強く出やすいため、特に乗り物の運転や機械操作などには要注意である。同じ成分は風邪薬にも含まれているため、鼻炎薬の持ち合わせがないときなど、緊急避難的に風邪薬を服用して症状を抑えることも可能である。

  • 第一世代抗ヒスタミン薬(内服)――マレイン酸クロルフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸カルビノキサミン(シベロン)、フマル酸クレマスチン等
抗アレルギー薬(第二世代抗ヒスタミン薬)の投与

数日から2週間程度服用して充分な効果が出てくる第二世代抗ヒスタミン薬(これを抗アレルギー薬と呼ぶことが多い)やケミカルメディエーター遊離抑制薬については、医師の処方箋が必要であり、メキタジンを除き日本では市販されていない(2007年現在、メキタジンに続いて塩酸アゼラスチン、フマル酸ケトチフェンがスイッチOTC内服薬として市販されるようになっている。後者は点鼻薬としても市販されている)。多くの第二世代抗ヒスタミン薬は、ケミカルメディエーター遊離抑制作用などを併せ持っており、鼻詰まりにも効果的な抗ロイコトリエン作用があるものもある。現在、花粉症に対して病院で処方される内服薬の多くは第二世代抗ヒスタミン薬である。予防薬として処方されるものも、これが多い。

第二世代は第一世代より眠気や口の渇きなどの副作用が少なくなっているが、こうした副作用の出方は人によってかなり異なる。なお、第一世代、第二世代という分類は欧米でおこったというが、第二世代抗ヒスタミン薬が市販されている海外であっても、少なくとも一般薬店レベルでは通じないといわれる。鼻炎やアレルギー、かゆみの治療に用いられるものは全て抗ヒスタミン(アンチヒスタミン)薬と呼ばれているためである。

  • 第二世代抗ヒスタミン薬(内服)――フマル酸ケトチフェン、塩酸アゼラスチン、オキサトミド、メキタジン、フマル酸エメダスチン、塩酸エピナスチン、エバスチン、塩酸セチリジン、ベシル酸ベポタスチン、塩酸フェキソフェナジン、塩酸オロパタジン、ロラタジン等
その他のケミカルメディエーター遊離抑制薬の投与

ケミカルメディエーター遊離抑制薬は点鼻薬・点眼薬として処方されることもある(数は少ないながら市販薬にもある)。

  • ケミカルメディエーター遊離抑制薬(内服)――トラニラスト、ペミロラストカリウム等
  • ケミカルメディエーター遊離抑制薬(点鼻・点眼)――クロモグリグ酸ナトリウム等

ステロイド薬

概要

ステロイド薬は、遊離抑制作用や受容体拮抗作用などといった限られた作用ではなく、アレルギーのメカニズムのほとんどを抑制する。抗炎症作用も強く、多くはこの作用を期待して用いられる。しかしながら、強力にアレルギーを抑えるということは、免疫そのものも減弱させるということでもあり、不必要な長期投与など不適切な使用によって他の感染症を招いたり、体内のホルモンバランスが崩れることにより重い副作用や後遺症が現れることもある。その他の副作用も多く知られている。リスク&ベネフィットをよく考慮して注意深く使用すべきである。

治療の実際

ステロイドの投与

花粉症においては主に重症例に対する抗炎症作用を期待して用いられる。抗ヒスタミン薬の内服などでは充分な効果がない場合、副作用の心配があるので短期間または頓服として内服が行われる。症状を抑える効果が高いこともあり、漫然と処方を続ける医師も存在するが、副作用だけでなくステロイド離脱困難に陥ることがあるので注意が必要である。特に小児に長期投与を行うと成長障害など重大な副作用が起こり得るので厳重に注意する必要がある。

第一世代抗ヒスタミン薬ほどの即効性はなく、充分な効果が出るまで1日程度かかる。基本的に短期であれば問題となる副作用はないが、第一世代抗ヒスタミン薬との合剤では、その抗ヒスタミン薬の副作用である眠気を感じることが多い。

点鼻薬のステロイドの場合は、局所に作用したのち体内ですばやく分解されるものもあり、副作用の心配も少ないため、重症の鼻炎がある場合には積極的に用いられる(医師により、重症でない場合も積極的に用いる場合がある)。特に遅発相による鼻詰まりに効果的とされる。鼻血が出やすくなる副作用を感じる患者もいる。

目の症状がひどい場合もステロイドの点眼薬が出されることがあるが、副作用に注意して慎重に使う必要がある。眼圧などの検査ができる眼科専門医に処方してもらうことが望ましい。

  • ステロイド剤(内服)――ベタメタゾン・マレイン酸クロルフェニラミン配合剤、プレドニゾロン等
  • ステロイド剤(点鼻)――プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン等
  • ステロイド剤(点眼)――フルオロメトロン等

ステロイドの注射

スポーツ選手が行っていたり、口コミで話が広がっている治療であり、徐放性ステロイド療法という。1回の「注射」で治ると噂になっている治療だが、統計によれば1回だけの注射で満足な効果を得られる例はそう多くはない。鼻アレルギーの診療ガイドラインにおいても、望ましくない治療とされている。内服と同様、全身のアレルギー(免疫)や炎症を抑える方法であるが、デポ剤という、油に薬剤を溶かした徐放性のものが用いられるため、筋肉内にとどまった注射液から数週間にわたって薬剤が放出され続ける点が異なる。報告されている副作用も多く、のちのちの体調に影響する後遺症の心配もある(骨粗しょう症など)。

なにをやってもかんばしくなかったという患者の最終手段に近い治療法、または事情があってどうしても薬の内服などができない場合の治療法であり、もしも副作用が出ても体から薬を抜く方法がないというリスクを考え、インフォームドコンセントを確実に行い、注射前後の検査を怠らぬよう慎重に実施すべきである。もちろん根治療法ではない。

ステロイドであることを隠して注射をする医師がいたり、患者もなんの疑問も持たずに気軽に注射を受けているなど、なにかと問題の多い治療法といえる。本来は保険適用の治療法であるが、自由診療(保険外診療)として高額な治療費を請求する医師もいる。注射した部位がへこむなどの副作用で訴訟になった例もあるといわれる。注射の副作用だと気づかなかったり、医師から示談を提示されるなどのため、表に出てこない事故も多いと考えられている。相談や苦情をいう第三者機関が事実上存在しないため、事故があっても患者は泣き寝入りをするしかないことも多いとみられる。

  • ステロイド剤(デポ注射)――トリアムシノロンアセトニド(ケナコルトA等)、酢酸メチルプレドニゾロン(デポ・メドロール等)等
  • (備考)デポステロイド筋注による副作用の例――満月様顔貌3.9% 副腎皮質機能低下0.1% 皮膚・皮膚付属器障害3.9% 月経異常ほか3.9% 適用部位障害(萎縮ほか)1.4%

Th2活性阻害薬

IPD(アイピーディー)というTh2活性阻害薬(内服薬)が、症状に応じて使用されることがある。

IPD(アイピーディー)は、アトピー性皮膚炎や気管支喘息でも使われる薬剤である。花粉症では、Th2細胞活性の亢進・サイトカインの中のIL−4・IL−5(アレルギー症状を誘発するもの)の産生の増加がみられることがあるが、この薬剤はTh2細胞の活性を低下させIL-4・IL-5 の産生を抑制する作用があり効果があるとされる。ただし、即効性はなく、効果が現れるのに数週間ほどの時間がかかるという特徴がある。

自律神経作用薬

鼻詰まりが強い場合、いわゆる血管収縮剤(α交感神経刺激薬)と呼ばれる薬剤の点鼻薬が処方されることがあるが、連用すると効果が弱まるだけではなく、かえって鼻詰まりがひどくなり、依存(離脱困難)になることもある。そうした副作用が出やすいため、短期間に限って処方されることが多い。鼻詰まりがひどい患者がステロイド点鼻を行うとき、薬剤が鼻腔内に入っていきやすいように、あらかじめ鼻粘膜を収縮させるために用いる場合がある。この種の薬剤は市販のほとんどの点鼻薬に含まれており、即効性と高い効果があるため、説明書の注意書きを守らずに乱用してしまいがちである。花粉症に使われる市販薬でいちばん問題になるのが、この点鼻薬の副作用である。幼児の場合、まれに重い副作用が出ることもあるので使用を避けるべきである(原則的に5歳以下には用いない)。

血管収縮剤は充血を取ると称する市販の点眼薬にも多く含まれており、やはり連用するとかえって充血がひどくなることがある。

副交感神経遮断薬である抗コリン薬はエアゾール剤の関係で製造を中止している。

  • 血管収縮剤(点鼻)――硝酸ナファゾリン、塩酸トラマゾリン等

薬物治療の注意点

病気によっては禁忌となっている薬もあるので、持病のある人はたとえ気軽に買える市販薬であっても、その使用については医師・薬剤師に相談すべきである。他に薬剤を常用している人や、乳幼児、小児、妊婦、授乳婦も同様である。なんらかの副作用を感じたら、早めに医師・薬剤師に相談すべきである。

作用と副作用とのバランスを考え、効果が不充分なものであったり、眠気などの副作用があまりに日常生活に支障があるようであれば、違う薬および治療法に変更してもらうよう医師に相談することも大切である。あまりものわかりのよくない医師であると感じたら、病院を変更するのも一つの方法である。

減感作療法

概要

花粉症の確実な根治療法はまだ確立されておらず、この減感作療法がもっとも根治療法に近い。広く免疫療法とも呼ばれ、広義では変調療法ともいわれる。一般的には下記の抗原特異的減感作療法を指す。

新たな知見にもとづいて減感作療法をさらに効率的に行う治療法、たとえばプルラン(多糖類)修飾を行った抗原の投与、合成ペプチドまたはCpGモチーフと結合させたペプチドの投与、体内でアレルゲンを発現させるDNAワクチンなどの研究・開発が進められており、よい結果が得られているものもあるが、確実に花粉症が治せる保証はないのが現実である。遺伝子操作によって作られた花粉症緩和米も、経口摂取によって減感作を行おうというものである。民間療法における特定の花粉(エキス)の摂取なども、この効果を期待したものと思われる。

こうした根治療法に近いものとして、IgEに結合することでアレルギー反応を起こさせないようにする抗IgE抗体というのも試験中であり、実用化が待たれている(海外ではすで使われている)。減感作療法を併用しつつ、シーズン前に1回の注射を行った場合、かなりよい効果が得られているという。

特異的減感作療法

アレルギーの元となる花粉のアレルギー物質を、濃度の薄いものからだんだんと濃度を上げつつ体内に注射していくことで、体をアレルゲンに慣れさせてアレルギーの症状をなくす療法。そのメカニズムは完全に明らかにはなっていないが、Th細胞のバランスを整えたり、免疫寛容を誘導するのではないかと考えられている。IgEではなくIgGを多く産生させ、アレルゲンがIgEと結びつく前にIgGと結びつくことによりアレルギー反応を弱めるという説もあった。このためIgGは遮断抗体とも呼ばれたが、鼻粘膜におけるIgGの量は変化がないことから、この遮断抗体の関与には疑問が呈されている。

100年近い実績があり、効果と安全性は確かめられている。約6割〜8割の患者に効果があるといわれるが、そのうち完治と呼んでいいほどに症状が改善するのは、さらに半分程度といわれる。1年〜5年の長期に渡って何度も注射せねばならず、治療の即効性はない。一般的には、花粉症のシーズンが終了してから(次のシーズンに向けて)治療を始める。早い人では注射を始めた次のシーズンから効果を実感できる。きわめてまれにではあるがショック症状などが出る危険性も指摘されている。しかし、多くは濃度や量の間違いなど、治療のミスによるものだろうともいわれる。注射後の監督不行き届きや、患者自身が異常を医師に伝えないことなども、副作用を早期発見できない原因となる。

日本では皮内注射による療法が一般的だが、海外では舌下投与も広く行なわれており、現在日本でも保険適用をめざして治験中である(自由診療として行っているクリニックも存在する)。舌下投与は副作用が出にくく、大量の抗原を投与できるので、効果の発現も早いという。また、自宅で治療が行えることも大きなメリットである。

現在広く行われているのはスギやイネ科およびブタクサ程度のみと考えてよく、花粉症の種類によっては希望する治療が受けられないのが実情となっている(海外から薬剤を輸入して治療することもある)。治療用エキスが標準化されているのはスギのみである。薬がよく効かない人や重症の人向けの治療といわれてきたが、年齢の若い人ほど効果が高いなどのこともあり、通院時間の都合がつき、意欲のある患者にとっては試してみる価値のある治療法といえる。通院の関係上、社会に出る前、学生のうちに実施するとよいといわれる。妊婦および授乳婦にも安全とされる。ただし、脱落する患者が多く薬剤が無駄になることがあったり、保険における評価が低いためか、実施している医療機関は少ない。季節前の数ヶ月のみ注射する季節前法や、数日〜2週間程度入院して行う急速減感作という方法もある。

非特異的減感作療法

ヒスタミン加人免疫グロブリン(ヒスタグロビン)やワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン)を数回にわたってルーチン注射する抗原特異的ではない減感作療法もあるが、一部の医療機関を除き近年はあまり実施されない(これらは減感作療法には含めないこともある)。アレルゲンが特定できない場合に行われたり、特異的減感作の効果をあげるために並行して行われることもある。アレルギー疾患患者の尿から採取した抗アレルギー物質であるMSアンチゲンも使われてきたが、現在は製造を終了している。

その他の治療

レーザー手術

鼻内部のアレルギー症状をおこす部分の粘膜にレーザー光線を照射して焼灼し、その部位を変質させることで鼻水・鼻づまりを押さえる治療法。原則的には鼻詰まりの治療法である。保険が効くが、美容整形クリニックなどで自由診療(保険外診療)として行っている場合がある。レーザー照射をしてから数日は、傷(やけどのようなもの)のために花粉症以上の鼻水が出て苦しむこともある。一般的にはシーズンの1〜2か月前に予防的に行う。効果の程度は個人差があり、有効でない場合もある(医師の技術にもよる)。

効果の持続は整形手術などとは違い、短ければ数か月、長くて2年程度のことが多い。そのため毎年行う患者もいるが、そうした繰り返しの処置による不可逆的な組織の変化、すなわち後遺症については、歴史が浅いこともあって明らかな知見はない。安全だという医師もいれば、毎年はやらないという方針の医師もいる。

細かくみれば、レーザー光線の種類や術式の違いもある。いうまでもなく鼻の処置であるため、目の症状には効果はない。

その他の処置・治療

レーザーと同様な原理で、鼻粘膜に対する超音波メスによる処置や、高周波電流を使った鼻の処置が行われている。薬剤の塗布によって鼻粘膜を化学的に焼く方法もある。治療成績や後遺症については、レーザー同様、確立した知見はない。

特に通気性の改善のため、鼻中隔湾曲など鼻の器質的な異常に対する手術も行われる。

鼻水がひどい難治例にはビディアン神経切除術なども行われる。

麻酔科からのアプローチとして、首にある星状神経節のブロックという方法も行われる。治療成績は明らかでない。

目の涙管に抗アレルギー薬を注入するという治療法も一部の眼科で行われている。保険適用ではない。

その他、その医師の独自の考え方により特殊な治療法が実施されることもある。治療成績はもちろん、安全性についても明らかでないものがあるので注意が必要である。

漢方薬による治療

各種の漢方薬による治療も行われる。漢方薬は症状ではなく体質によって薬を選択するので、本格的には専門家の見立てが必要である。一般の西洋医学の医師は、効果のマイルドな薬という観点で西洋薬的に用いることが多いが、それは正しくないともいわれる。体質との相性がよいとかなりの症状の改善が期待できるが、現代医学的に効果が確かめられたものは小青竜湯だけである。病院で処方を受ければ保険が利く(しかしながら、一般の病院では漢方の専門知識をもった医師はめったにいない。理想的には和漢診療科などがよい)。上記抗ヒスタミン薬などの西洋薬との併用も行われる。女性の妊娠・授乳期にも比較的安全といわれる。症状を抑える即効性の薬のほか、長く飲み続けて体質を変えて根治をねらうとされる種類の薬もある。

多く誤解されているのが、漢方薬なら副作用がないということだが、決してそのようなことはない。特に小青竜湯や葛根湯に含有されるマオウは、体質または服用量により動悸や血圧上昇などが起こりやすい。ただし、抗ヒスタミン薬のような眠気はない。

  • 花粉症によく用いられる漢方薬――葛根湯、柴朴湯、小柴胡湯、小青竜湯等

代替医療・民間療法

患者レベルで高い興味がもたれている民間療法であるが、その定義はなく、科学的に実証されているわけではない。食品や飲料の摂取などのほか、さまざまなグッズ類を使用したり、鍼灸などの伝統医療や整体、医師によらない漢方治療なども民間療法といえる。有効なものもあるとは考えられるが、多くはそれらの成分や機序が解明されていない。患者の口コミなどによって広まるものもあるが、プラセボ(偽薬)効果もあると考えられている。テレビ番組などによって毎年新たに話題になっては消えていくものも多い。ごく一部の医師により治療の補助として用いられることもある。

以下に主なものを示すが、太字はある程度の研究がなされているものである(ただし、その研究のレベルは大きく異なる)。近年においては、衛生仮説とも関わりのある乳酸菌類の研究がいちじるしく、ヒトにおける臨床試験や、メカニズムの解明が進められている。また、地方の特産品の消費推進のため、その健康効果を実証する試みも多く行われているようである。

そうした研究によれば、下記の植物生薬の一部においてはポリフェノール(その種類は4000〜5000種類あるという)と呼ばれる植物の苦味・渋み成分が広義の抗アレルギー効果を示すという。成分中のビタミンの一種が症状の軽減に有効とされたこともある。しかしながら、そうした効果がある程度実証されているものであっても、その多くは劇的な効果は期待できない。

これらの成分とビタミン・ミネラル等を配合したサプリメント類や清涼飲料水など、いわゆる健康食品類も多く出ている。患者においては、過信・盲信せず、多大な経済的被害はもちろん、健康被害などをこうむらないように注意が必要である。自分に効いたものが他人にも効くとは限らない点にも注意が必要である。これらのほか、漢方的・栄養学的見地などから、特定の食品の制限や積極的な摂取なども行われる。薬効を期待するというより、いわゆる健康法であろう。

なお、2007年2月、スギ花粉(実際はスギのつぼみ)をカプセルにつめた健康食品にて、服用した患者が一時意識不明になるという事故がおきた。また、花粉症との関連はないが、高濃度のにがりでも事故が起きている。「食品だから」「薬ではないから」安全であるという根拠はまったくないということを使用者は強く認識しておかなければならない。

  • 植物生薬
    • 甜茶、ラカンカ、日本山人参、霊芝、シジュウム(グァバ)茶、紫蘇の葉、ニンニク、アマランス(アマランサス)、緑茶、凍頂烏龍茶、杜仲茶、ナンテン、ドクダミ、アロエ、タマネギ抽出物、クロレラ、柿の葉茶、ミント、ネトル(西洋イラクサ)、花粉(スギ花粉)、スギ茶、カリン、青ミカン抽出物、ハトムギ茶、つくし、クミスクチン、メチル化カテキン
  • 機能性食品
    • パパイヤエキス、エゾウコギ、月見草種子エキス、リノレン酸、ショウガ、ゴボウ、青汁、各種乳酸菌、にがり、フコイダン、ヨード卵、DHA、じゃばら、フキ(西洋フキ)
  • 理学療法
    • 鍼、灸、電気治療、整体、指圧
  • その他
    • 気功、アロマテラピー、ホメオパシー、マイナスイオン、自己尿

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セルフケア

抗原の回避と除去

花粉症の症状はアレルゲンと接触したときにのみ現れるので、それを防ぎさえすれば症状は現れない。このため花粉との接触を断つことがもっとも効果的な対策である。治療としてみた場合、アレルギーの原因にさかのぼって対処するため、原因療法といわれることもある。症状が出てから対策を行うのではなく、症状が出る前から予防的にケアを開始するとより有効である。すなわち自分で行う初期治療である。

このような対策によりアレルゲンとの接触をできるだけ避け続けていれば、年を経るごとに抗体値がだんだんと下がっていくことが期待される。接触を続けていれば抗体値も上がり、症状もひどくなる。すなわち、薬剤治療により症状を抑えているからといって、なんの対策もしなくてよいということにはならない。患者にとっては、こうしたセルフケアはもっとも基本的なことといえる。

  • 花粉症の症状は目や鼻で強く現れるため、外出時にゴーグルやマスクを着用すると効果的である。マスクの質よりもつけかたが問題であり、すきまを作らないことが肝要である。ゴーグルほどの目の保護機能がなくとも、いわゆるだてメガネでも有効であることが実験によって示されている。特にマスクにおいては、スギ花粉症のシーズン特有の乾燥や低温から鼻粘膜を保護することにもなり、シーズン前から(発症前から)の着用が推奨される。
  • 室内に花粉を持ち込まないよう、花粉の付着しにくい上着を着用したり、帰宅時に玄関の外で花粉を落としてから入室するなどの対策も有効である。換気などのために窓を開けることはもちろん、洗濯物や布団などを屋外に干すことも避けるべきである。干す場合は取り込むときによくはたく、ブラシではらう、または掃除機で吸い取ることが推奨されている。同居の家族にも協力してもらったほうがよい。しかし、どうしても花粉は屋内に侵入してくるので、掃除も有効な対策となる。床の花粉を舞い上げないよう、掃除機ではなく濡れぞうきんによる拭き掃除が推奨されている。
  • 室内に浮遊している花粉を除去する空気清浄機や、清浄機能のあるエアコンを使用するのもよい。空気清浄機は風量の豊富なものを選択し、花粉が落下する前に吸い取ることを考えるべきであり、装置の自動運転を過信しないことがだいじである。加湿器も、浮遊している花粉を湿らせて重くし、落下を早めるために有効とされる。湿度を高めることは鼻や喉の粘膜のためにもよい。ただし湿度を上げすぎるとダニやカビの問題が出てくる。一般に湿度50%程度が適当といわれる。加湿器がない場合、ぬれたタオルなどを室内干しするのも効果がある。
  • 地域によっては花粉の飛散量が少ないため、花粉症の症状が現れないところもある。スギに関していえば、沖縄や奄美諸島、小笠原諸島、札幌以北の北海道がこの例に当たる。こうしたところに転地療養として旅行するのもよい。ただし、旅行中に症状が出なくとも、シーズン全体を通しての症状にどれだけ好影響があるかは不明である。スギは日本および中国の一部にしかないのでこの時期の海外旅行もよい。ただし、ヒノキ科の針葉樹は海外にもあり、それが花粉を飛ばしている地域では、スギ花粉症患者でも症状が起こる可能性がある。
  • 地域により花粉飛散量が多い時間なども異なる。近年広く提供されるようになったリアルタイムデータやシミュレーション予報などを参考に、外出時間や窓を開けての掃除をする時間等を考慮するのもよい。一般に夜間〜早朝が少ないといわれるが、必ずしも当てはまらないこともある。天候によっても飛散量は異なり、晴れて気温が高く、湿度の低い風のある日が花粉が多い。雨の日であれば飛散量は少ないかゼロである。ただし、原因は不明であるが、必ずしも雨のほうが楽だという患者ばかりではない(その場合、血管運動性鼻炎が合併しているのであろうとの見方もある)。雨の日の翌日に晴れると、2日分の花粉が飛ぶといわれるので要注意である。
  • 原因植物自体を排除することも、自宅の庭に生えたキク科やイネ科の植物などがアレルゲンになっている場合には有効である。河川敷や公園などの植物が原因と考えられる場合は、管理者である自治体などに相談するとよい。

その他の対処法

  • 不規則な生活リズムや、睡眠不足、過労や精神的ストレスによる自律神経のバランスのくずれはアレルギー症状を悪化させることがあるため、これらを避けることは症状軽減に有効である場合がある。また、大気汚染と花粉症との関連は明らかにはなっていないが、汚染物質は症状を悪化させることもあるといわれるので、呼吸する空気はきれいであるにこしたことはない。高たんぱく・高脂肪の、いわゆる西洋風の食生活との関連も指摘されており、食事内容の見直しも有効である場合がある(和食がよいともいわれる)。
  • 飲酒は血管を広げて鼻水を増やすため避けたほうがよい。翌日にも影響する場合もあるといわれるが、ごく少量であれば、人によりほとんど問題にならない。タバコも避けたほうがよいといわれるが、もともとヘビースモーカーである患者がそのせいで症状が悪化するということはあまりないと考えられている(少量の喫煙はIgE産生をうながし、多量の喫煙は抑制するともいわれるが確実ではない)。自身のためではなく、他人のために避けるべきであろう。特に親が喫煙者である家庭の子どもはアレルギーを発症しやすいとの統計もあり、妊娠中および幼小児のいる家庭では喫煙は避けるべきである。
  • 鼻内の花粉の洗浄も行われる。生理食塩水による鼻うがいや、洗浄のためのグッズ類も市販されている。目の洗浄なども行われる。いずれも頻回に行うとよくないといわれる。洗浄に用いる生理食塩水は 33度程度に温めるとよいとされる。水道水での洗浄は避けたほうがよい(特に鼻洗浄は粘膜上の繊毛が障害されるので禁忌である)。
  • 温かいスチームを吸入するという治療法(局所温熱療法)もあり、器具も市販されている。この効果は医学的にも確かめられている。100%有効であるわけでもなく、その効果も弱い(スコアで1段階の症状の軽減程度)が、薬剤を使わないため、妊娠・授乳期の女性には第一選択となる治療法である。スチームの温度は43度程度が適するといわれているが、38度でも効果があるという実験がある。1日数回の吸引を繰り返すとよい。器具がない場合、蒸しタオルなどを顔にあてて湯気を吸入するとよい。
  • 目のかゆみに対しては、冷やしたタオルなどをあてる(局所冷罨法)と一時凌ぎになるといわれている。こうした目の症状が出やすい人はドライアイの人に多いともいわれるので、その対策にも気を使うとよい。原則的にコンタクトレンズは使用禁止である。使う場合はレンズの洗浄を確実に行うか、1日使い捨てタイプの使用が推奨されている。
  • 前述のアレルギー日記等を記録して、自分にとってなにが悪化要因だったのかをつきとめることも有用である。また、薬剤の効果を確かめることにもなり、医師の協力が得られれば、それを治療計画に役立てることもできる。

●主にスギ花粉症に関する社会的側面

都市化の影響

1983年から1985年にかけての児童のアレルギー性鼻炎の疫学調査によって、都市化が進んでいる地域ほど患児が多いという結果が得られたことがある。1996年のスギ花粉症の有病率の調査でも、山村より都市部のほうが高いという結果が出ている。

他にも、山村などの郊外より都市部のほうが花粉症の発症者数が多く、また、山村部では感作率が高くとも発症者はそう多くないなどの調査結果もあるが、サンプルが少ないうえに、その原因をさぐるためのより深い研究などはなされていない。上記、あきる野市と大田区の比較(これにおける83年と85年という、調査年の違うデータをもとに「都市部のほうが多い」との論が展開されたこともある)でもわかるように、郊外のほうが花粉症有病率が高いというデータもあるなど一定しておらず、未だ評価は定まってはいない。

1987年と1992年に行われた名古屋市内と恵那郡での比較では、農村部といってよい恵那郡のほうが有症率が高かった。大阪市内、大阪府下、宮崎県下の小学校児童の比較でも、大阪市内が抗体陽性率がいちばん低かったなどの調査もある。よって、都市化との関連ははっきりしたことが言えないのが現状である。

同一地域で考えれば、都市化が進むと患者が多くなる傾向は認められてはいる。それは土の地面が少なくなり、いったんコンクリートやアスファルト面に落ちた花粉が蓄積し、それが二次飛散することによって花粉への曝露が増え、発症者の増加や症状の悪化がおきたと考えても説明がつく。また、交通量が多いところは、車の通行によって路面の花粉が巻き上げられ、空中花粉数が多くなるという説も提唱されている。ビル風などの影響もあると考えられている。都市のヒートアイランド化や砂漠化(低湿度化)によって花粉や粉塵が飛散しやすくなっているとの指摘もある。ヒートアイランド化によっておきる上昇気流は、低層では周囲の花粉を都市部に吸い込む効果をもたらすとの見方もある。

ただし、こうしたメカニズムは、多くは確実には実証されてはいない。また、地域差や経年変化を解釈する場合、一般に郊外ほど都市化の波が遅れてやってくること、花粉量そのものの変化や患者数は累積するという点、近年は地域・地方ごとの生活レベルや環境の差が小さくなっていることもあって、こうした調査結果から一定の結論を導くことはむずかしい。

さらにいえば、花粉飛散数の調査というのはいくつかの手法があり、特定の装置に落下・付着した花粉数を測定しても、それはいつまでも空中を漂い続ける花粉を測定していることにはならないことや、ビルの屋上などでの計測は、必ずしも市民が生活している環境中の花粉を測定していることにはならないことにも注意が必要である。

一般によくいわれるのが、都市部における排気ガス等による大気汚染との関連である。しかし、それを明確に示す一定の信頼性のある疫学調査の結果はない。国立環境研究所による調査(1993〜1995年)や東京都による調査(2003年)、環境省による調査(2003年)でも、花粉症と地域や場所ごとの大気汚染との関わりを示す結果は得られず、居住地域の花粉飛散数の影響を受けることのみが結論されている(東京都による個人の追跡調査によれば、花粉症患者のほうがそうでない人よりも多量の花粉をあびていた)。千葉等における調査(2002年)で、症状によりわずかながら関連が示唆される結果が得られたことはあるが、総合的にみると、やはり統計的に有意な関連はみられないと結論された。

こうしたスギ花粉症と大気汚染との関連を示唆した論文は、花粉症が社会問題化したころにいくつか出されたが、その論旨によれば必ずしも大気汚染が原因とは断定できない。すなわち、上記の交通量によるという解釈のように、異なる説明ができるからである。さらに、そうした論文データのひとつに捏造があったことも、ある耳鼻咽喉科医師の執拗な追及によって明らかとなっている。

スギ林に道路が通じた場合、それに面した部分のスギは日当たりがよくなって花粉を多く発生させる。よって、その周辺で花粉症患者が多くなったとしても、排ガスや交通量のみの影響を考えるだけでは不充分である。

スギ人工林と花粉症

花粉症の中でも最も患者数の多いのはスギ花粉症だが、それはスギ林の面積が多く、飛散する花粉量が莫大なためである。日本の国土の7割を占める森林2510万ヘクタールのうち4割が人工林で、2005年の統計によれば、その人工林(ほとんどが針葉樹である)およそ1000万ヘクタールのうち45%をスギ、25%をヒノキが占めるまでになっている。そのスギ林の面積は国土の12%にも達している。

これほどまでに人工林が増えた原因は、終戦後より1970年代にかけて林野庁が推進した復旧造林と拡大造林である。戦争需要により荒れた山林を回復し、当時の高度経済成長による木材の需要増に対応して採られた政策(外地からの引き上げ者の雇用対策でもあったという)で、たとえば1930年代の年間の造林面積は10〜13万ヘクタールであったが、1960年代は年間36〜40万ヘクタールが造林されている。これらは治山の面のみならず人口増加による住宅建設などの需要に応え、日本の経済成長に大きく貢献したいっぽう、補助金目当てでそれらの奨励種ばかりが植えられた、その補助金制度が林業のあり方を腐敗させた(すなわち、林業というのは投資・投機または貯蓄的性格が強く、そもそも儲からないものなのだとされるが、そこに多数の人間が目先の利益目的でむらがった)と説く人もいる。

しかし、これによっても全ての需要に応えることはできず、規制緩和の波もあって海外からの木材輸入が1960年前後から段階的に解禁されるに至った。輸入業者から消費者までの経路が比較的単純である外材に対し、国産材の流通や加工は、古くからの慣習をひきずった零細な業者を複雑に経由するため、おのずと輸入材に太刀打ちできるものではなかった。工業製品としてみた場合、品質もよくなく、同規格のものを大量供給するようなこともむずかしかったといわれ、国産材が外材に負けたのは価格の面のみではないとの指摘もある。

そして1975年頃よりの木材需要の頭打ちや、円高等の影響による国産材の需要低下は、伐採(間伐)の必要経費も出ないほどの価格の暴落を引き起こし、それがさらに林業の不振をまねくという悪循環を招くこととなった。現在では木材需要の8割が外材に頼っているという。

しかしながら、ひとことで価格の暴落とはいうものの、そもそも日本における林業経営のコストは異常なほどに高い。たとえば1平方メートルあたりの育林費は西部アメリカ3ドル、イギリス5.5ドル、西部カナダ10ドルに対し、日本では73ドルであるとのデータもある。素材生産コストも高い。そのいっぽうで、林業経営で得られる所得収入は年間36万円とのデータもあり、事実上、産業としての日本の林業は崩壊しているのが実状である。

採算が合わないために山林所有者の林業経営への意欲は失われ、枝打ちや間伐などの管理が行われないままの森林も増えている。密集したままひょろっと伸びた間伐手遅れ林は、俗にロウソク林・線香林と呼ばれ、さまざまな問題を引き起こしている。また、山林が放置される原因のひとつに、評価額30万円以下の土地には税金がかからないという税法上の問題があるとされる。森林面積のおよそ60%を占める民有林は、その規模が著しく零細であり、多くは税金を払う必要がない。それゆえ、相続さえ行われておらず、未だに明治の曽祖父の代の名義のままで、崖崩れ、山火事などが生じてもだれの山でどこに所有者が住んでいるのかさえ判らずじまいとなり、山は荒れ放題になっているのが現状である。

こうして短期間に大量に植林されたスギは、木材として使われることも手入れをされることもなく、70年代から80年代にかけていっせいに花粉を多く飛ばす林齢(樹齢)になり、それが現在の花粉の大飛散をもたらしている。花粉産生の旺盛な林齢25〜45年のスギは、スギ人工林の60%程度であるが、ヒノキはスギに遅れて植林が広まったため、まだ若い林齢のものが多い。すなわち、今後はさらにその花粉が増えると予測されている。

これらのことからも判るように、花粉症の被害は将来を見通さない無計画な造林(1000万ヘクタール以上の人工林を持つ国は世界で4ヵ国だけである)と、輸入自由化をしておきながら国内の流通などをはじめとした林業・木材産業の効率的なシステム作りなどを行ってこなかったという、林業行政の失策によってもたらされた人災、または公害という側面が強い。

こうした人災の面が強い花粉症の例として、阪神地域、ことに六甲山周辺におけるオオバヤシャブシ花粉症があげられる。1960年代の大規模な宅地整備事業に伴って、安価で荒地に強いオオバヤシャブシが大量に植栽され、それによって花粉症患者が多く発生した。だが、疾病の原因であることが明らかであっても、そのために伐採することはできないという法律上の不合理があった。しかし、地域住民による自主的な植え替え事業などが行われ、花粉および花粉症患者を減らすことに成功している。

この例からもわかるとおり、花粉症は明らかに花粉が第一の原因であり、花粉が減れば患者も減ることは実証されている。

それにも関わらず、「年間数百億円とも言われる花粉症対策商品の売り上げが景気刺激効果があるために、この問題を意図的に放置しているのではないか」と揶揄されるように、行政はスギ花粉の被害に対して有効な根本的対策をほとんど講じていない。また多くの公共事業は、その費用や経済効果などを事前に調査するが、そうしたことも行われていない。

再び需要が増えれば伐採なども進むということで、国や自治体においては間伐材を含めた国産材使用の推進や流通の改革なども行っており、実際に加工技術などの進歩により一部では国産材の供給量が増えているとはいうが、いわゆる特需であった高度経済成長期と同様な国産材需要を全国的に掘り起こすことは難しい。

自然保護などの観点から自主的なボランティアによる小規模な植え替え事業なども各地で行われており、行政がそうした森林管理作業ボランティアを助成するなどのことも行われている。

しかし、いずれにしろ、こうした施策により、いつ・どれほどの花粉が減るのかはまったく明らかでない。そもそも、そうした研究もきちんとした形では行われてはいない。良心的な林業家によって、環境の面においても林業経営の面においても「よい森林」を作る運動も行われてはいるが、彼らにしても「こうすれば花粉も減るであろう」との希望的観測をするのみであり、科学的な調査がなされたことはない(こうした良心的な林業家も、行政による画一的かつ効率優先の「樹木の畑」的な施行指導などに関して批判的な目で見ている)。

しかしながら、森林は二酸化炭素の吸収(炭素の一時的な固定または蓄積)源であることや、水源涵養、防災、自然保護など様々な理由で、大規模な一斉伐採なども事実上不可能である。林業人口の減少や高齢化、山村の過疎化なども大きな問題となっている。よって、巨額の税金を投入すればすぐに解決する問題ではないのも自明である。

もちろん、花粉症増加は花粉が増えたことのみによって全てが説明できるものではない(花粉症増加の原因の項を参照)と考えられているが、それも花粉源に対する根本的対策がおろそかでよい言い訳にはならない。いかなる条件が影響しようとも、花粉がなければ花粉症は発症しないのは厳然たる事実である。少量飛散の年には発症者が少ないこともこれを裏付ける。

こうしたことにより、東京都の石原知事による鶴の一声で始まったのが「花粉の少ない森づくり」である。この施策のもっとも重要な点は「いますぐ始めなければならない」である(行政の動きの項を参照)。森林面積が少なく予算も潤沢である東京だからこそできるのだと揶揄されたり、内容や効果については不明な点も多くあるが、もっとも動きの少なかった林業方面からの本格的な対策であるこの運動は、今後注意深く見守る必要があろう。

行政の動き

国においては、1990年度に「スギ花粉症に関する関係省庁担当者連絡会議」が設置され、1994年度より当時の科学技術庁によって数年間に渡る「スギ花粉症克服に向けた総合研究」が実施された。2004年度からは会議の名称が「花粉症に関する関係省庁担当者連絡会議」と改められ、2005年度からは基礎研究などよりさらに踏み込んだ具体的な取り組みがなされるようになった。

こうした行政の動きに関しては、自民党内で「花粉症等アレルギー症対策議員連盟(通称ハクション議連:事務局長・小野晋也衆院議員)」が、安倍晋三ら約50名(当時)の国会議員によって1995年に設立され、本格的な対策の推進を国に働きかけるようになったことが大きく影響している。これにより花粉症を含めたアレルギー対策に関する予算が急激に増加し、2002年度のアレルギー関連予算は7年前の27倍に達する73億7200万円にもなった。1996 年に「アレルギー科」の標榜が許可され、2003年に理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターが設立されたなどのことも議員らの働きかけによるという。

ただ、近年では未曾有の大飛散と予測された2005年のスギ花粉症のシーズン前には、各省庁が連携して広報などの対策に当たり、厚労省では公開のシンポジウムも開催したが、国を挙げての統一した施策・政策を打ち出して国民の期待に応えることはなく、シーズンが過ぎてからは目立った動きはない。

林野庁では今後5年間に60万本の無花粉スギを植えるということを2005年に発表したが、1ヘクタールあたり3000本を植林すると考えればわずか200ヘクタールにすぎない。日本のスギ林の面積である453万ヘクタールに比較すれば、まったく実効がない計画といえる(2003年度におけるスギ苗木の供給量は全体で1500万本である)。同庁では「緊急間伐5カ年対策」等、花粉症対策にも役立つとして間伐の推進や植え替えを実施していると発表しているが、実施後数年を経た現在でも、それらによる具体的な花粉抑制効果についてはなにひとつ発表されない。実際にも所有者の意向が確認できた森林や公有林のみを間伐した自治体などもあり、早急に間伐を実施する必要がある要間伐森林の間伐は、進展しているとはいえない状況であるため、総務省より農水省に対して勧告がなされたこともある。また、そもそも厚生労働省では早くから林野庁に対して無花粉スギの開発を要望していたにもかかわらず、林野庁では労力がかかるとして取り合わなかったということも報道された。

さらに、2006年には林野庁が花粉を多く付けるスギを選択的に間伐することで高い花粉抑制効果が得られたと、誤解を招く発表をしていたことがマスコミの指摘によって明らかになった。これは高い花粉抑制効果がみられた場合も若干あったということにすぎなかった。継続的な調査を行っていなかったことも明らかになった(なお、この間伐方法のマニュアルを製作して林業家に役立ててもらうとの計画であるというが、これでは林業における適正な間伐にはならないとの指摘もあり、林業家の協力が得られるかどうかは疑問視されている)。

農業生物資源研究所はスギ花粉の抗原を含んだ「スギ花粉症緩和米」の開発を進めているが、厚労省は食品とは認められないなどとしている。野菜茶業研究所ではべにふうきという茶品種を開発し、それに含まれているメチル化カテキンが花粉症抑制に効果があると報告している。しかし、食品について効果効能の表現は薬事法で規制されており、事実上の国の機関がそれを堂々と言うのはどうかという指摘もある。一方、実際に製品を製造販売している大手企業は、それに関する効能効果は表現していない。なお、この商品化を要望したのもハクション議連だとの話もある。こうしたことから、政府の対応は患者不在の対策であると指摘され、縦割り行政の弊害が現れていると評する人もいる。

唯一の根本的治療である減感作療法(治療の項を参照)に関しては、以前より保険での評価が低いことが普及を妨げているひとつの原因と指摘されていながら、これについても医療行政はなんらのてだてを打っていない。また、診療・治療のガイドラインの周知徹底を図ると言ってはいるが、相変わらず不適切な治療が多く行われている事実は放置されている。今後実用化されるであろうある新しい治療法(薬剤)に関しても、費用がかかるため、保険で認められるかどうかわからないといった心配も一部でなされている。

また、行政が行う花粉症対策とは基礎研究や治療法の開発、花粉飛散の予報技術の向上などが主であり、スギ・ヒノキ花粉発生源への根本的な対策がおろそかになっているとの指摘は従来より多くなされている。実際に国会質疑等でも取り上げられてはいるが、答弁はその場しのぎのごまかしを繰り返すばかりであり、大きな進展はない(こうしたことは林野庁の予算が少ないためであり、国が第一次産業を軽視しているのが根本的な原因との見方もないわけではない)。

さらに、すでに複数の「関連はみられない」との結果が出ているにも関わらず、環境省では今後も大気汚染との関連を調査するという。こうした動きは、国が過去の失政の責任を認めたくないから、いつまでも研究をやめないのだと揶揄もされている(しかしながら、大気汚染がさまざまな健康被害をもたらすことは確実である。近年の新たな知見にもとづいた新手法の調査が望まれよう)。

いっぽう、1980年代後半より花粉症対策検討委員会を、1998年からはアレルギー性疾患対策検討委員会を設けるなど独自に花粉症・アレルギーに関する研究や施策を行ってきた東京都では、花粉の発生源である森林への対策を取りまとめ、2006年度より事業として始めることになった。石原慎太郎都知事が2005年のスギ花粉飛散期に花粉症になったため、急遽具体化したと揶揄もされたが、それは真実であった。すなわち、2006年3月10日の知事会見にて「それは私、今まで花粉症じゃなかったけど、去年あるときなってから、急きょ、問題意識が。人間てそんなもんだよ、それは」と、これを認める発言をしている。

この計画は「花粉の少ない森づくり」というプロジェクト名で、自然保護活動家として知られる作家のC.W.ニコル氏らが代表発起人となり、多摩地域のスギ林の伐採および花粉の少ない品種のスギや広葉樹への植え替えなどを50年計画で行い、今後10年間で花粉の量を2割削減するという。ただ、予算は充分ではなく、募金も行う。多摩産材の消費も推進する。単に間伐や植え替えを推進するということではなく、2割削減という具体的な数値目標を打ち出したことは画期的なことといえる。都議会内でも超党派の東京都議会花粉症対策推進議員連盟(会長・古賀俊昭)が結成された。

こうした動きとは別に、東京都による音頭とりによって、関東の8都県市では協調して花粉症対策を進めていくことになった。国にも対策を要請する。その8都県市でのアンケートでは、市民が花粉症対策として行政にもっとも進めてほしいと考えているのはスギの伐採や枝打ちで、56.4%であった。

だが、本来東京都は花粉症増加の原因をディーゼル自動車の排気ガスに求め、排ガス汚染との関連はみられないという疫学調査の結果が出たにもかかわらず、その規制を強行した自治体であることは記しておかねばならない(ただし、規制そのものは花粉症のみのために行なったものではない)。2005年シーズン前には、規制をしたので今シーズンの都民の症状は軽いはずだとのコメントを知事が述べているが、そのシーズンに当の知事が花粉症を発症しているのはわが国の花粉症史に残るおおいなる皮肉である。

なお、やはり東京都が実験を進めていた、スギにマレイン酸ヒドラジドを注入することにより着花を抑制するとの計画は、材質に影響が出るなどのこともあって中止となった。

これらのほか、各地で無花粉スギや花粉の少ないスギが発見され、その(苗木の)増殖や植林なども多く取り組まれるようになってきているのも、ここ数年の動きとして目立つことではある。だが、その植え替えなどの面積は決定的に少なく、当面の実効はないと考えられる。自治体によっては、造林用に生産する苗木の全てを花粉の少ない品種に切り替えたところもあるが、実際の森林の植え替えが済むには500年または1000年かかるというコメント付きで報道がなされたり、患者の間では、植え替えの効果が出る前にアレルギーの根本的治療法が開発されるであろうとの、ある意味絶望感を感じさせる話が行われるのも珍しくはない。しかしながら、親木の数が一定レベル確保できれば、苗木の増殖は加速度的に進む可能性もあり、期待はなされている(なお、現在、苗木の増殖に関しては、従来からの挿し木ではなく、組織培養という手法で大量の苗木を生産する試みが進んでいる)。

2007年現在のところヒノキにおいては花粉のない品種の発見はなされていないが、花粉の少ない品種の発見はいくつかなされており、自治体によっては苗木の生産が始まっている。

2005年に北海道十勝支庁管内の上士幌町が避花粉地として名乗りをあげたほか、続いて2006年には鹿児島県の奄美諸島も療養や保養目的の観光客(花粉症患者)誘致を始め、これは国交省がモニターツアーの募集を行った。こうした、花粉症ビジネスに参入する自治体の動きも記しておきたい。

リアルタイムデータの観測やシミュレーション技術の向上は、花粉飛散の予報のみばかりではなく、同時に花粉発生源の特定に役立つ。よって、花粉を多く発生させるところや人口密集地への影響の大きなところから林業面での対策を行うなど、効率的な取り組みができる可能性を秘めている。このことは税金を投入して対策を行う以上、無駄なことはできるだけ避けなければいけないため、以前より指摘されてはいた。実際に研究が行われたこともあった。

2006年5月、林野庁はそうした花粉源に関する地図を作成し、影響の大きいところから優先的に植え替えなどの対策を推進するとのことが報じられた。その後、林野庁自身も「平成18年度から、効果的な花粉発生源対策を推進するため、大都市圏への花粉飛散に影響しているスギ林を推定するための調査を実施」するとのことを公表したが、どのような方法でそれを行うのか、たとえば環境省が行っているリアルタイムの花粉飛散数計測やシミュレーション技術・データなどを利用するのかどうかなどは明らかになっていない。

●補足

世界の花粉症

すでに述べたように、ヨーロッパではイネ科の植物、アメリカではブタクサが多い。日本のスギ花粉症を含めて、世界の3大花粉症ともいわれる。

ヨーロッパのうち、大陸では各種の樹木による花粉症も少なくはないが、花粉症発祥(発見)の地であるイギリスではことにイネ科の花粉症が多く、人口の15〜20%以上が発症しているという。文献的にはスペインにも多い。一般に北欧と呼ばれるスカンジナビア地域ではシラカバなどのカバノキ科の花粉症が多いといわれ、10〜15%程度という数字がある。最近ではこうしたカバノキ科の花粉症をヨーロッパの花粉症の代表的なものとして述べることもある。地続きであるロシアでは極端に少ない。

アメリカ合衆国における有病率は5〜10%程度といわれる。ブタクサがほとんどともいわれるが、国土が広大なため、地域によってさまざまな種類の樹木・草本が問題になっているようである。北欧と同じく寒冷な地域であるカナダではカバノキ科の花粉症が多く、6人に1人という数字もある。

アジア太平洋地域では、文献的にはトルコやオーストラリアなどが40%以上という異常に高率の有病率を示しているが、この数字には疑問が残る。実際には10〜20%と推測される。

世界的にみて、先進工業国ではおおむねアレルギーが増えており、花粉症も全人口の1〜2割というところではないかとみられている。

いずれも、英語圏でなくとも、あるいは Hey(干し草)が原因ではなくとも、Hay fever の病名が慣用されることがある(そのため、花粉症の説明において、干し草が原因ではないとのことが述べられることもある)。さらに、アレルギー性鼻炎全般を Hay fever と代名詞的に総称することすらあるようであり、一般向けの病気についての解説等は、日本の感覚では疑問を持たざるを得ないことがある(もっとも、症状や治療方法はほぼ同じであるため、原因物質によって区別する必要もない)。

これらのうち、カバノキ科の花粉症が多い北欧やカナダでは口腔アレルギー症候群を示す患者も多く、カナダでは花粉症患者の半数程度が経験するという。

こうした海外の花粉症については、プロスポーツ選手の海外進出などにともなって、ニュースとしてよく目にするようになってきている。

スギ花粉症については日本だけのものと考えられてきたが、中国の一部にある柳スギがきわめて近縁、または同一種と考えられ、実際この花粉による花粉症患者が確認されたり、日本のスギ花粉症患者も発症することがわかっている。さらに、フランスにおけるホソイトスギ(ヒノキ科)花粉症患者と日本人のスギ花粉症患者の実験により、両者に交差反応がみられた。すなわち、海外でヒノキ科花粉が飛散していれば、日本人のスギ花粉症患者も症状が出る可能性があることが示唆される。

なお、スギがないはずの欧米等において、スギも花粉症の原因になるといわれることがあるが、これは cedar をスギと訳したためである。ヒマラヤスギがマツ科であるように、cedar は実際には日本でいうヒノキあるいはマツの仲間の針葉樹である(例:ウエスタン・レッド・シダーはヒノキ科ネズコ属)。

海外旅行時の注意

日本国内であればマスクや薬の入手は容易であるが、他の国ではそうとは限らない。特に欧米では日常的にマスクをする習慣がないため、奇異な目で見られるということもある。街角でポケットティッシュを配るなどのことも行われてはいない。

その反面、国によっては日本では処方薬となっている第二世代抗ヒスタミン薬が一般の薬店で買えるなどのこともある。しかし、それが自分の体質に合っているとも限らない。特にヨーロッパでは、当地の伝統医療であるホメオパシーのレメディを勧められることもあるという。

これらのことにより、花粉症患者が事情がよくわからない海外へ訪れる場合は、シーズンを問わず、念のために自分に適した薬とマスク程度は持参したほうがよいといえる。一般に花粉症はきわめてまれと考えられている、いわゆる南洋の島などに観光旅行に行ったさいにも、原因不明の花粉症様の症状に苦しめられたとの情報もある(多量に栽培されているマンゴーやサトウキビなどによる可能性がある。これは国内でも、南方へ旅行した際に同様なことが起こる可能性がある)。

特に病院で抗アレルギー薬の処方を受けている患者が、シーズン中に短期(1週間前後)の旅行を行う場合は、その効果を減弱させないためにも、旅行中も薬の服用を欠かさないほうがよい。やや長めの旅行であれば一時中断してもよいが、帰国時が花粉症シーズンであるならば、その数日前から予防的に薬を服用しておくとよい。これは初期治療と同じ原理である。

ペットの花粉症

近年ではペットの花粉症も問題となっている。イヌの花粉症は98年に、ネコの花粉症は00年に初めて報告されたとされるが、ヒトの場合と同様、それ以前から存在したと推測される。特にイヌにおいては、ヒトのような鼻症状より毛が抜けるなどの皮膚症状が多く見られ、見た目にも悲惨な状態となることが多いといわれる。

獣医師により検査や治療は可能だが、イヌにおいてはヒトと違って抗ヒスタミン薬が効きにくく、ステロイドに頼らざるを得ないことが多い。重症の場合は減感作治療が行われることがある。ネコにおいては検査も治療も困難であるといわれる。

近年はこうしたペット向けのサプリメント類も販売されるようになってきている。

将来展望

文科省の第8回技術予測調査によれば、日本において重要な課題の第2位が「花粉症やアトピーなどのアレルギーを引き起こす免疫制御機構や環境要因の解明に基づく、即時型アレルギーの完全なコントロール技術」であり、これが実現する時期は2015年、さらに、それが社会的に適用されるのは2027年であると予測された。

●その他の「花粉症」

  • イギリスの劇作家ノエル・カワード(Noel Coward 1899〜1973)の戯曲に「Hay Fever」がある。日本では「花粉熱」と題されて2003年に上演されたことがある。
  • Sunflower's Gardanのアルバムに「ひまわり花粉症」(2004年発売)というものがある。
  • 沢田亜矢子のシングルレコードに「花粉症」(1982年発売)というものがある。
  • インディーズソングライターの奥様レコードの曲に「花粉症」(1997年リリース)がある。
  • チャーリー浜のシングルCDに「私は涙の花粉症」がある。

●関連項目

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posted by kamiryu07 at 19:13| Comment(0) | TrackBack(1) | 病名カ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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花粉症に眼科の治療
Excerpt: 目の花粉症の治療
Weblog: 花粉症を治したいブログ
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