2008年02月22日

バセドウ病(バセドー病、グレーブス病)

バセドウ病(バセドウびょう、独:Basedow-Krankheit)とは、甲状腺自己抗体によって甲状腺がびまん性に腫大する自己免疫疾患(V型アレルギー)。バセドー病ともいう。英語圏ではグレーブス病(グレーブスびょう、英:Graves' disease)と呼ばれる。グレーブス(1835年)とバセドウ伯(1840年)によって発見、報告された。

●病態・原因

甲状腺の表面には、下垂体によって産生される甲状腺刺激ホルモン (TSH) の受容体(甲状腺刺激ホルモン受容体、TSHレセプター)が存在する。バセドウ病では、自己の体内にこの受容体に対する自己抗体(抗TSHレセプター抗体、TRAb)が生じ、それがTSHの代わりにTSHレセプターを過剰に刺激するために、甲状腺ホルモンが必要以上につくられてしまう状態となる。甲状腺ホルモンは全身の新陳代謝を高めるホルモンであるため、このホルモンの異常高値によって代謝が異常に活発になることで、心身に様々な影響を及ぼす。

この自己抗体産生が引き起こされる原因は、2007年現在不詳である。

なお、ヨウ素の摂取量が少ない地域(西ヨーロッパなど)では、ヨウ素を大量摂取することで、潜在的なバセドウ病が発症することがある。これをヨードバセドウ病と呼ぶ。

●統計

  • 20〜30歳代に多く、男女比は1:3〜4。中年女性に多く、甲状腺機能亢進症の代表的な病気である。また、最近では若い女性にも増えてきている。
  • バセドウ病患者はなんらかのアレルギーを持っている人が多い。

●症状

  • 甲状腺腫大、眼球突出、頻脈をメルゼブルク (Merseburg) の三徴と言う。
  • 他に甲状腺機能亢進症を来たし、以下の症状も見られる。
    • 低カリウム血症から低カリウム性周期性四肢麻痺になる。
    • あらゆる臓器が常に全力疾走しているのと同じ状態になり、大量のエネルギーを必要とするため食欲が異常に増し、体重減少を来たす(代謝以上に食欲が亢進し、太る場合もある)。
    • 心臓機能の亢進から収縮期高血圧、時に心房細動を来たす。
    • 新陳代謝の活発化から発汗過多を来たす(夏の暑さに耐えられない)。
    • 内分泌のバランスが崩れて精神的に不安定になる、イライラする、集中力が低下する。
  • 甲状腺クリーゼ:突然重篤な甲状腺機能亢進状態となる合併症。高熱、頻脈、嘔吐下痢意識障害などを来す。生命に関わることもあるため注意を要する。
  • 眼球突出、眼球運動障害複視)、視神経症をきたすことがある。

●検査

  • 血液検査
    • 甲状腺ホルモン
      • T3, Free T3
      • T4, Free T4
      • TSH
    • 電解質
      • 全身の細胞膜上にあるNa-Kポンプにもアクセルがかかり低カリウム血症になる。
    • TRAb (=TSH receptor antibody)
    • 抗TPO抗体(抗ミクロゾーム抗体)
  • 画像診断
    • 頸部レントゲン撮影
    • 頸部エコー

●診断

甲状腺腫大、眼球突出、頻脈などからバセドウ病が疑われる場合、血中の甲状腺ホルモン測定により判断する。

●治療

薬による治療

甲状腺ホルモンの合成を抑える薬(抗甲状腺薬:メチマゾール(メルカゾール)、チウラジール(プロバジール))を、規則的に服用する方法。定期的に甲状腺ホルモンの量を測定しながら、適切な量の薬を服用することで、血液中の甲状腺ホルモンの濃度を正常にする。薬で甲状腺刺激ホルモンの量を調整することで普通の人と変わらない生活を営むことができるが、甲状腺刺激抗体が消えるまで薬を飲みつづける必要がある為、完治には長い期間を要する。副作用としては、5%に皮膚の炎症、0.05%に白血球の減少や無顆粒球症が生じることがある。これらの副作用は服用開始から3ヶ月以内に現れることが多い。無顆粒球症が生じたら直ちに治療を中止し、放射性ヨード投与など別の治療法に切り替える必要がある。

アイソトープ(放射性ヨード)治療

ヨードの放射性同位元素を服用し、甲状腺の細胞の数を減らす方法。甲状腺細胞の数が減少すれば、分泌される甲状腺ホルモンの量が減少する。およそ2〜6ヶ月で甲状腺ホルモンの量が減少すると言われ、手術よりは手軽で、薬より早く治るのが、この方法の長所である。但し、時間経過とともに細胞が減りすぎて、逆に甲状腺の機能低下が発生することもある。

手術

甲状腺の一部を残して、切除する方法。甲状腺を切除することで甲状腺ホルモンの量を調整する。他の治療法より早く完治し、再発も少ないが、入院を要する。また、傷跡が目立つことがある。術後に甲状腺機能低下症に陥ることが多いが、その場合の治療は通常の甲状腺機能低下症と同じである。

●妊娠・出産について

適切な治療が行われていないとき、妊娠中、へその緒を通しての胎児への栄養がうまく送れなくなり、胎児が発育遅延になる場合がある。

●歴史

各国において

  • まだよくわかっていなかった頃は心房細動等を引き起こして亡くなった人が多い。
  • クレオパトラはバセドウ病であったという説がある。

アイルランド

発見

  • 1835年にロバート・ジェイムズ・グレイヴズが報告した。

ドイツ

発見

  • 1840年にカール・アドルフ・フォン・バセドウが報告した。ゲオルグ・ヒルシュによりこの名が付けられた。
    • 症状の「メルゼブルクの三徴」は、バセドウの出身地、Merseburgに因む。

日本

社会的影響と病気の認知

  • 中年以上の女性がバセドウ病に罹患した場合、更年期障害と勘違いすることが多い。
  • 本症の発見前後、日本の医学はドイツ語圏に属していたため、現在でも日本では本症をバセドウ病と言うことが多い。英語圏ではGraves' diseaseと言うのが通常。

posted by kamiryu07 at 08:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 病名ハ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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