2008年05月29日

ダウン症候群(ダウン症)

ダウン症候群(だうんしょうこうぐん、英 Down syndrome)とは、一般的に21番染色体が1本過剰(トリソミー)となる染色体異常を形成することで生じる先天性の疾患群。一般にダウン症とも呼ばれている。

●歴史

1866年に英国医師(眼科医)ジョン・ラングドン・ダウンによって論文発表された(学会発表は1862年)。最初は特徴的顔貌を捉えて「Mongolism(蒙古人症)」または「mongolian idiocy(蒙古痴呆症)」と称されていた。

1959年、フランス人のジェローム・レジューンによって、21番染色体がトリソミーを形成していることが発見された。

1965年にWHOによって「Down syndrome(ダウン症候群)」を正式な名称とすることが決定された。

●疫学

一般には1/800という割合で発生しており決して稀ではない(染色体異常の中で最も頻度が高い)。20歳未満の母親による出産ではおよそ1/2000なのに対し、いわゆる35歳以上の高齢出産での発生率は、35歳でおよそ1/400、40歳でおよそ1/100、45歳でおよそ1/30と高率となっており、「統計的」には母体の加齢により発生頻度は増加する。卵子は1個のみしか排卵されないため、多数からの選択が行われる精子と違って突然変異の影響を受けやすいということに起因する。 95%が標準型21トリソミー、3〜4%が転座型、1〜2%がモザイク型である。標準型は精子、卵子形成時の減数分裂における染色体不分離が原因であり遺伝性はないが、転座型の場合は親の片方が均衡転座保因者である場合もあり、適切な遺伝カウンセリングを受けることが望まれる。

●臨床像

知的障害、先天性心疾患、低身長、筋力の弱さ、頸椎の不安定性、眼科的問題(先天性白内障、眼振、斜視、屈折異常)、難聴があり、青年期以降にはストレスから来るうつ症状・早期退行を示す者もいる。男性の場合不妊となる可能性が非常に高いが、女性の場合は多くは妊娠が可能であり、胎児のダウン症候群発症率は50%である。陽気な性格であることが多い。言語表出に対して言語理解やコミュニケーションの理解が良好であるために、知的発達の程度に比して良好な社会生活を送れることが多い。

40歳以降にアルツハイマー病が高確率で起きる。

外表奇形

釣りあがった小さい目を特徴とする顔貌を呈する。手の猿線など。

精神発達遅滞

一般に精神発達遅滞が認められるが、その程度は様々である。

合併奇形

ダウン症候群では高率に内臓の奇形を伴っていることが多い。

青年期の心理的問題

思春期から成人期にかけて、部屋に閉じこもる、寡黙になる、といった変化が急に現れることがあり、その多くは環境の変化や契機となる出来事への適応障害または心因反応と考えてられている。しかしこの病態に対しての医学的な検討がまだ為されていないため、その治療については確立した方法がまだない。

●検査

妊娠段階において妊娠15〜16週ごろに行う羊水染色体検査で診断することが可能ではある(産婦人科病院で行われる)。なお検査結果が出るまでに2〜3週間を要する。流産の危険性が1/200程度あるといわれる。一方、最新の統計調査によると羊水検査と流産危険率上昇との間には相関関係がないという結果も出てきている。

※一般に学会の倫理規定などでは、正式には「医療側はこういった出生前検査は妊婦に対し積極的に進言してはいけない」とされている(厚生科学審議会先端医療技術評価部会・出生前診断に関する専門委員会)。そのため「妊婦検診等でこういった検査を勧められなかった」としても医療側の落ち度は無いとされる(裁判事例:京都地裁平成9年1月24日判決)。そのため妊婦は自ら医療側に進言(結婚している妊婦の場合夫婦の同意に基づく)しないと正式には行ってもらえない。また検査の結果も、正式には「妊婦側が聞くことを希望して初めて通知出来る」とされている。

一方、英国では出生前診断が国の政策のもと行われ広く普及している。

●治療

ダウン症は遺伝子病であるため、根本的な治療方法は無い。数十年前までは平均寿命が20歳前後であったが、これはダウン症者に多くみられる循環器合併症の外科的治療が当時はできなかったためであり、合併奇形を治療すれば健康状態は改善することができ、現在では平均寿命も50年程度に延びている。臨床像としては知的障害とあるが4年制大学を卒業した人もいる。また、早期養育が発達の助けに良いと言われる。

配慮

母親に原因があるとの誤解が少なくないが、95%を占めるトリソミー型においては配偶子(精子、卵)形成時の染色体不分離が原因であり、誰にでも一定の確率で起こりうる。特に母親に対するケアが最重要となる。状況に応じた遺伝カウンセリングが必要である。

●議論

検査

出生前検査の倫理的妥当性に関しては、現在も種々の立場からの様々な論議がある。一般に「35歳以上の高齢妊婦」が対象とされることが多いが、これは単に「羊水採取に伴う超過流産の可能性」を出生時の発生率が上回る年齢に線引きをしたものに過ぎず、厳密な科学的根拠に基づくものではない。

このような一律の取り扱いは「事実上、主にダウン症の産み分けにつながり、障害を有する人の生命を軽んずるものである」として患者や家族並びに人権団体から強い非難を受けている。

しかし、一方では、社会福祉が貧困と言わざるを得ない日本においては、複数の障害児を持つことが家族にとって現実的とは言えないことから、障害児をもった親が複数の障害児を避けるために検査を受けるという選択をしばしばとらざるを得ないのも事実である。(ただしこういった主張がしばしば出生前診断に反対する患者家族からなされるため、ダブルスタンダードとの批判もある。)

中絶

出生前検査によって「胎児がダウン症候群」と診断されても、母体保護法によって胎児の問題での中絶は認められていないため、それだけでは人工妊娠中絶の適用とはならない。

しかし、母体保護法の条文にある妊娠中絶の適用として「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」をもって、「母体としての精神的問題が著しい」または「精神的問題によって母体の健康障害が著しい」とされれば、妊娠22週未満であれば一般に人工妊娠中絶は行われる。

ただし、母体保護法によって「人工妊娠中絶を行うには、人工妊娠中絶手術を行う母体保護法指定医師によってその必要があるかどうかの認定」が必要であるため、行う医療機関と行わない医療機関が存在する。

●関連項目

  • 染色体異常

●ダウン症を題材にした物

  • のんちゃんの手のひら(金子節子作、コミック)
  • たったひとつのたからもの


posted by kamiryu07 at 10:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 病名タ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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